この本、初見だと思って読んでいたんだけど、読み進めて気づきました。これ読むの2回目だった。
私はこんな風に、少し斜に構えたような(という表現が正しいとは思えない、なんだろう)タイトルが好きで、タイトルと作者だけを見て図書館でジャケ借りをしました。
前も同じような気分で、お、山崎ナオコーラじゃん、ん、なんだこのタイトル、奥行きがあって好きだな、という程度の気分で借りたんだろうなと思う。
さて、このお話。ざっくりあらすじを申し上げると大学生のサークルでの話。主人公の女の子がちょっと変わった考え方を持つ子で、それを取り巻くサークルの人間関係とか、就職活動とか、そういう系の「考えなきゃいけないこと」や「やってかなきゃいけないこと」に対して前向きに取り組んだり、時にはネガティブになってしまったり、まぁ、人間だものいろんな気分があるよね、というお話。
人間っていろんな面があるよなぁ、と自分のことを考えたりします。
どこで何をしている自分が一番、自分らしいと言えるのか。そんなことをしばし考えたりもします。もしかすると、お酒を飲んで好きなことを考えたり、したりしている時が一番自分らしいのではないか、と今、ふと思いつきました。お酒の力を借りて理性みたいなものを外し、その殻の中にこもっていた「私」というものをゆっくりと陽に晒してみるような。陽に当てすぎてしまうとカラカラに乾燥してしまうので、適度に酔いが覚めたらまた理性をいう殻をかぶるんです、多分。
しかしまぁ、理性っていうものがよく分からなくなりますね。
例を挙げると、例えばさ、人によく見られたい、から他人に愛想よくするとかさ、それが本当の自分ではない、と仮定するじゃないですか。だけどそれだって、広い目で見たら自分なワケだし、これが本当の自分、とか、これは本当の自分じゃない、とかって、ただの偏見なようにも感じます。私の存在、個性に対する偏見。
そういうのを、山崎ナオコーラさんは、しっかりと考えながら書いているような気がする。敏感というか。
この、長い終わりが始まるというのは、ある曲のことを指しているんだそう。
「終わり」というのは一瞬なことが多くて、終わりと一言に言ってもいろんなコンテキストがあるけど、その「終わり」が長いとは?と思ったんだよなぁ。割と最初の頃にその種明かしが出てくるから気持ちはスッキリしたんだけど、
大学時代って、
学生時代の終わりを表してるじゃないですか。
この作品の中にはその、大学4年生の心境が高らかに綴られていて、「学生生活の終焉」を、ある曲にちなんで描いているんだよなぁーきっとそうだよなぁー。
ですよね?って聞いたら山崎ナオコーラさんは、「ふふ、忘れた、分かんない」とか言いそう。
途中、セックスに疎い男女がその行為を恐る恐る体験するところがあるんですが、私も経験が多いとは言えない方に属する人間なので、そのシーンはちょっと微笑ましかったです。
そういう時期、あるよね、的な。
しかしアレですね、この、疎いカップルが持つ心境みたいなものを丁寧に描けるのすげぇなぁ。そういう心境を体験した人しか描けないのではないだろうか、知らんけど。
だとすると私も、はい、きっと描けるんだと思います。思わず数十年前のそういう時を思い返してみて気持ち悪くなりました。
しかしアレですね、世の中には外向的な人、内向的な人と2つに大きく分けられるようですが、この後者に属する人は、きっとこういう話が好きなんじゃないかと思う。
内向的な人の心に響きやすいストーリーを描くのが得意なんだと思う。