8月7日 パパ活と、囚人のジレンマ

隣の席にいる二人の会話は続く。
「信じられる?同じチームのタトさん、パパ活してるんだってさー。そんなことを堂々と言っちゃうあたりがもう信じられない。まぁ、元々信用してなかったんだけど」
「タトさんかー。パパになってるってことでしょ?それ言っちゃってるんだ?うわぁ。デリカシーがないというべきか。それ、結局アレなんでしょー、俺は女ひとりを囲っておけるほどの経済力を持っているんだ、っていうのと、性欲をそこで満たしていますっていうアピール?みたいなのを周りにひけらかしてるんでしょ?キモいわー」
「そうそう、そういうとこなんだよね。元々信用してなかったっていうのはその通りなんだけど、ノリさんが本当にパパ活してるなら、それはそれで経済力があるってことだし、本当に女性を囲ってるんだったら、人間的魅力もあるってことなんじゃない?ただ、それを堂々と言うことこそが問題なんだよ。人に言うってことは、どこかで自己満足の一部で、自分を高めるために他人を利用しているんじゃないの?それって、信用できる行為だと思えないんだよね」
「あー、それは確かにそうだよね。自分の行為を正当化するために他人を利用するって、なんかえぐいよね。それって、逆に信用を失う原因にもなるんじゃない?」
「そう、それがノリさんの大きな問題だよ。自分の行為を肯定するために他人を利用するなんて、そんなの長くは続かないよ。それに、そういう人には信用がないんだよね」
「分かる。なんかさ、そのノリさんの話、何だかあの有名なゲーム理論、囚人のジレンマを思い出させるんだよね」
「囚人のジレンマ?」
「簡単に言うと、それぞれが自分の利益を最大化しようとがんばった結果、全体として利益を損なう、みたいな。ノリさんのパパ活公言もそんな感じに思えるんだよね。彼は自分のステータスを示すためにそれを公言してるけど、結局その結果として俺たちからの信用を失ってる。それって、ちょっと囚人のジレンマに似てると思わない?」
「なるほど。面白い。確かにノリさんの行動は、自分だけの利益を追求する結果として、結局は全体の評価を下げてしまってるかもしれない。その観点から見れば、囚人のジレンマに似てると言えるかもね。だとしてもさ、なんで俺らがそういう風に、彼への評価を下げちゃうんだぜ、って考えつかないんだろうね。不思議だわ」