図書館で借りました。
乃南アサさんという名前は知っていたものの、今まで読んだことが無かったので借りてみたという動機です。
色んな仕事に手を出すも続かない、ちょっと残念なメンタルの主人公と、ひょんなことから知り合った女性など、個性的なキャラクターで繰り広げられる物語。
人情系とでも言うべきでしょうか。人と人とが支え合って生きていく、というニュアンスも感じます。
簡単に言うと「家族の姿」っていうものは、それこそ家族の分だけ違いがありますが、ベースにあるのは信頼することとか、助け合うとか、そういう温かい部分で支えられてるのでしょう。
人との付き合い方で悩んだり、心がモヤモヤする時に読むと元気が出そうな気がします。
ニサッタ=明日、という意味
私を含め多くの人はこのタイトルから、明日という言葉を連想することができません。あえて、アイヌ語にするところもこの小説の大きな鍵になっているのですが、アイヌの人たちが「ニサッタ」と言う時、明日に希望を持って生きていこうぜ、のようなニュアンスを含んでいるように思います。
開拓民たちと共存することができず、徐々に人口が減っていった先住民たちは、やがて混血という形にはなりますが、彼らの血を薄く引き継いでいく形になっているのでしょう。
自分たちの民族が、どんどん減っていくというのは、なにもアイヌの人たちだけではなく、人口が減少している今の日本という国に住んでいる私たちにも言えることです。
けれど私たちは「私たちの民族を絶やさないようにしよう」と常日頃考えているかというと必ずしもそうではなく、一方で日本に住んでる外国人たちがやらかしちゃってるニュースとか見ると、「俺たちの国を汚さないでくれ」と思ってたりとか、自由にいろんなことを考えているなぁと思います。私もその一人ですけれども。
その他感想など
小説を読んでレビューを書こう!と言う気持ちになったのは、ストーリーが面白く、きちんとすべてが収束していい感じになったのが気持ちよかったからです。
直木賞を取る人って物語を構成するのが上手なんだよなぁ。さすがって感じです。
私も小説を書くことがあるものの、きちんと物語を終わらせることができません。ストーリーが途中で成り立たなくなってしまうのはきっとプロット作りの段階で破綻しているからに違いないのですが、そういうこともなく、その流れに沿ってきちんと書き終えられるのって一つの才能ですよね。乃南アサさんもその一人なんだろうな。そして、違う作品も読んでみたいと思いました。
今回、図書館で借りたと前述しましたが、この作品を選んだのは完全に「なんとなく」という気持ちからでした。私は短編集よりも長い方が好きなようで、この本は結構厚く、読み応えがありそうで、そういうところに期待を寄せたんだと思います。読んで良かったです。
★を5つにしなかったのは、今後に期待したいからです。構成力、書きっぷり、多くの部分で★5つの感じではありました。私はこういう作品に飢えていたのかもしれません。