機は熟さない

AmazonのKindleで電子書籍を無料で出すことができると知ってから、無性に小説が描きたくなっている。

いくつかアイデアがあるものの、小説を書くことに向き合う時間が取れないという理由、というか言い訳で、小説を描けていない。

理由は単純で、小説を描くことが生活の優先順位で下の方にいるからだ。
これが、もしかしたら自分の食い扶持になっていくかもしれないというのに、その未来をあまり信用できず、それよりは重要な本業、家族との生活を優先してしまっている。

多分、小説を描いて暮らすというのは、ロマンの一つなのだろう。
理想とは少し違う。
けど、現実とは明らかに一線を画す。夢物語とでも言うべきか。

もし、十分に時間もあって、気力や体力が充実していたら、それに向き合うのだろうか。
向き合うかもしれない。
だが、残念ながらそのような瞬間は訪れない。
十分に時間があり、気力や体力が充実していると、小説を描くこと以外に時間を割こうとするからだ。
自分にとって小説を描くことは、所詮その程度なのだろう。

と、客観的に見る自分に対し、良し、そんなにまで言うのならやってやろうじゃないか、と思う自分がいないか、というと否定しきれない。
もしかしたら小説を描くことの優先順位がぐっと上がり、あっという間に書きあげてしまうかもしれない。
そんなことは実際に起きないような気がしてしまうけども。

多分、一番現実的なやり方として、隙間時間を利用して作り上げるということだ。
仕事の合間、休憩がてら、そんなことを考える。
小説は構想を練り上げる時間がたっぷり必要なのだから、手元にあるメモ帳にでもそれを綴ってみるとか、そういう小さな一歩を踏み出し、踏み続けることで、やがて小説が出来上がってくるのだろう。
そんなことを思いながらも、一歩を踏み出すことができず、地団駄だけの足音が聞こえてくるのである。