西加奈子さんを読むのは3作目です。サラバ!、まく子、そしてこの「夜が明ける」。
どの本を読もうかと言うのはあらかじめ決めているわけではなく、図書館で在架されているものをパパっと見て、そこからジャケ借り、という感覚で、この本を手に取りました。
いやぁ、壮絶でした。
西加奈子さんの想像力にただただ圧倒されるばかり。
サラバ!も、まく子も、かなり熱量の高いお話でした。
だけどこの夜が明けるは、個人的には、それらを凌駕していると感じました。
西加奈子さん、もしかすると壮絶な貧乏体験をしたのかもしれませんが、それだとしても、貧乏なことを適切な言葉で表現することがいかに難しいか。それを、西加奈子さんの筆力をもって読者に届けようとする気持ちがすごい。
特に凄かったのは、貧乏のところと、パワハラのところ。
少しは救われてほしいなぁと読者側として思わずにいられないほどの、貧乏+パワハラと言う両輪で襲ってくるところは、正直読むのがしんどかったです。
私は、幸か不幸か、そのどちらも壮絶なレベルでは経験したことがないので、それらは想像するしかないんですが、私が主人公だったら辛すぎて自殺してしまうと思います。それくらい辛かった。
最初の40ページくらいまではだらだら読んでいたのですが、それ以降は一気に読んでしまいました。次が気になってページを捲る指が止まらない、というのを感じた久々の作品でした。
読んだ後、思わず、重たいため息。
プロットをぼんやり考えてみると、二人を主人公と読んで差し支えないでしょう、彼らが生きようともがく気持ちを持つキャラクターが立ち、彼らを取り巻くような、少なからず彼らには迎合しない人たちがいる感じ。ストーリーについてはネタバレになっちゃうので詳細までは描きませんが思春期の頃から青年へと、そして33歳に至るまでの紆余曲折、紆余曲折なんて四文字熟語だけでは語りきれないほどに大小さまざまな波が押し寄せてきます。
私の中では冒頭に述べた貧乏+パワハラのところの描写とストーリーがリアルで、壮絶すぎて、だから逆に幕切れのところは、えっ、このまま終わっていくの?!、と残りのページボリュームを左手の親指で感じながら読んでいました。最後は報われてほしいと多くの読者が考えただろうと思いますが、、いや、主人公の彼らは彼らなりの、ハッピーエンドだったのかもしれないですね。
また、人間は、小説に、いったいどんなことを求めるんだろう、そんなことも考えながら読み進めました。
おそらく私の場合は、私とはかけ離れた境遇の人が登場する物語を欲するような気がします。というか、小説を読む人ってみんなそんなもんかね。
エンタメ性に溢れるストーリーというのは、そういうものなのかもなぁ。ふと思いましたがいわゆる探偵ものは、実際に刑事や探偵を生業としている人は読むんだろうか。そういうものを生業にしていても、小説に描かれるような奇抜な殺人事件みたいなものに触れる機会ってそんなにないから、それはそれ、って感じなのかなぁ。
私は、私が生業にしている業種/職種に近い物語を読みたいか、と言われると微妙だなぁ。私は共感ではなく、私とは関係ないところで繰り広げられるストーリーに一喜一憂したいタイプなんだろうな。