5月15日 エレベーターの到着を告げる音

人生ってドラマの連続だから。
私が何気なく過ごした2023年5月15日は、誰かにとっては掛け替えのない一日だったはずだから。

今日の私はいつもと同じように、週明けのどんよりとした空気を纏ったまま、会社へと向かった。
余計なことは考えずに。
ひたすら、最近読んでいる「竜馬が行く」の文章に目を通しつつ、国会議事堂前駅を通り過ぎないように。
物語の中にいる竜馬は、どこかあどけない。
彼の目に映る世の中は、いったいどのようなものだっただろう。
そんなことを考えながら、国会議事堂前駅までの時間を潰した。
途中、多くの人が大手町、そして霞ヶ関で降りる。
彼らには彼らの、彼女らのドラマがあり、頭の中で蠢いている電気信号のことをちょっと考えただけで、それが膨大な規模になるということに気づき、少し気持ち悪くなる。
私は、私一人の頭だけで精一杯だというのに。
神は、皆それぞれの頭の中をデザインしているのだろうか、と。

会社の最寄り駅に着くと、雨はやんでいた。
空を、見上げる人。
そんなものには目もくれず、ひたすら会社への道を歩む人。
私は、どちらのことを考えながら、オフィスへと昇っていくエレベーターのボタンを押した。すぐに、ピンポーンとエレベータの到着する音が聞こえた。