リトル・バイ・リトル | 島本理生 | ★★★★☆

島本さんの作品を読むのは3話目です。
ファーストラブ、ナラタージュに続いて今作が3つ目。

あらすじ

母子家庭で暮らす若い女性の視点。
母と、異父姉妹の妹と3人暮らし。
習字教室に通い、ティッシュ配りや看板持ちのバイトをしていて、ひょんなことから知り合ったキックボクサーとの淡い恋を体験。彼のお姉さんがなかなか個性的。

(私視点の)島本理生さんの作風

島本さんの表現で私が面白いと感じる点がいくつかありますが、私としての1番は「登場人物の一挙手一投足、仕草を丁寧に描く」ことです。
それが心地よくて、ずっと触れていたいと願いたくなってしまいます。仕草の表現がとても豊か。サマーセーターについたモルモットの毛を取りながら〜、とか、ついその情景が浮かんでしまいます。

2つ目は、小気味良い場面展開です。
全般的に淡々と物語が続く印象があり、サラサラと読めてしまいますが、時折ガラッと場面が変わるところがあり、気持ちが強制的に切り替えさせられるのが面白いです。

3つ目は、登場人物の愛嬌が面白い点です。
上述した、キックボクサーのお姉さんがとても面白いです。私には姉がおり、そういう点でも共感を持ったというか、近しい存在に感じました。終盤にある、車の中での会話とかだいぶ面白かったです。

このリトル・バイ・リトルは芥川賞候補になったということで読みました。
私として興味があったのは、ストーリーの作り方、およそ150ページ程度で収められることの多い芥川賞で、物語の展開としてはやはり起承転結があるのだろうと思っています。
この物語で言うと冒頭の、読者の理解を深めるところから始まり、キックボクサーとの出会いから、ちょっとしたデートが承なのかなぁ。
そしてキックボクサーの誘いで行った飲み会が転、最後の公園のところが結?だとすると結末がちょっと尻切れ感なのかなぁ。ストーリーとしてきちんとした結末を迎えさせようとする気がないのなら、別にふっとした瞬間に切っちゃうのも有りなんだろうなぁと思いました。
まぁでも二人の淡い恋の、これからを読者は想像するのでしょう。私もそうしました。
そうやって余韻を残して終わりにする感じも、島本さんならではなのかもしれません。

星を4つにしたのは、私の満足度によるものです。
期待していた温度感で、ボリューム、登場人物への愛着などから4つにしました。
面白かったです。