# 綾辻行人 another ★★★★☆

読書って山登りみたいなところがあって、山登りって言っても茨城の筑波山に登った経験くらいしかないんですが、小説を読み進めていくと、途中、ん、なんだこれみたいなところがいくつかあって、その答えが後になって分かることって良くありますよね。

山登りは、歩いているうちにこれから登ろうとする頂上が見えるじゃないですか。あの山をめがけて登っていこうみたいな。あの山、頂上にたどり着いた時にはいったいどんな景色が待っているんだろう、その時に抱く気持ち、予感を胸に秘めながら山を登り続けていく。一歩一歩、足を前に出して、ゆっくりと登っていく。一歩一歩は小さな一歩だけど、それが積み重なって大きな達成を得ることが出来たり、というのは自己啓発系の本とかにも書いてあったりしますが、

脈絡のない話を、とりとめもなく書いてしまいました。本題に入ろう。

## 達成感の話

綾辻行人さん、初めて読みました。

うちの子ども繋がりで知り合った方から、オススメいただいて。

謎解き?ホラー?ジャンルはちょっと良く分からないんですが、少しずつ、玉ねぎのように纏った謎が解かれていくのを理解する時、めっちゃ気持ち良かったです。

冒頭に山登りを挙げましたが、山を登りきった時の達成感ってこんな感じなのかもな、と思いました。

今回読んだのは平成21年12月の再版本で、あとがきを除く本文だけで637ページという大作、読むのに腕が疲れましたが、この厚みっていうのも山の高さに似てるよね。

全部読み終わるころには今とは違う景色が見えるんだろうなぁ、楽しみだなぁ、という気持ちを終始抱きながら読んでました。

## 初体験だった綾辻行人さんの描き方

とても分かりやすいなぁと思いました。読者を選ばないように、分かりやすい日本語で文章が展開されていて、読者の想像力に依存しない形での、割と具体的な情景、人物の心情描写とか。

最近は西加奈子さんにどっぷり浸かっているところで、彼女が時折見せる、読者の想像力を試そうとしてるこれ?みたいな描写がたまに辛いな〜と思うことがあったんですが、この話にはそれがほとんどなかったです。

強いて言えば地下の雰囲気くらいかなぁ、なんとなーく、の感覚で想像しましたが、そこはそんなに重要なシーンじゃなかったので助かりました。

## 星4つの理由 (ここからネタバレ含みます)

星4つにしたのは、私の中で綾辻行人さん1冊目という点、これから他にもいくつか読んでみたい、のでベンチマークとして4つ、という理由になります。

上述の通り文章は分かりやすいし、600ページ超え作品なのにストーリー展開が上手いからサクサク読めちゃうし、そして骨子となるストーリー自体ももちろん面白かったので、そういう意味では星5でも良かったかもしれません。今後に期待ということで。

ここからネタバレになりますが、強いて言えばということで、そもそもなんでこんなことになっちゃったの?とか、最後の妻はなんであんなことになっちゃったの?とか、なんかそういうところが物足りないなと思いました。全ての謎が伏線?と言っちゃうと言い過ぎかもしれないですが、それらもきちんと回収されると良かったのかなぁ。別に、夜見北山の神社の祟りじゃ〜!みたいな、かなり古風な話になりますが、そういうのでも良いのかなぁとか。なんでもかんでも回収すれば良い、そこはもう読者の考察にお任せしますよ、という綾辻行人さんからのメッセージだったのかもしれませんね。その辺までしっかり書いちゃうとプラス150ページ、そしたら800ページとかになっちゃうもんね。

ネットでちょっと調べたら関連ストーリーがあるとのことなので、読んでみたいと思います。