Kindle Unlimited対象だったので読みました。
この本は以前図書館で借りて読んだことがあったので、読むのは2回目です。
嫉妬。星4つで、あと1つは悔しかったから付けませんでした。大人気ないですね。わかってます、私はそういう人間なんで。
嫉妬と言っても、いったい何に嫉妬したのか。
作者の感性と、それを描くことのできる語力に。
きらめき、ざらつき、空気にもいろんな捉え方があるけれど、それをきちんと、読者に分かるような言葉を使って丁寧に描いているところが、綿矢りささんの凄さだと思います。
読者に分かるような言葉ってのがまた難しい。
主人公と同年代の頃に描いたのかな、ちょっとズレがあるかもしれないけれど、作者本人ではなく主人公の目線で感じる物事を、作者が代弁してあげているところに距離感がなく、ピッタリと寄り添っていて、その、主人公に憑依してる感覚に圧倒されました。
物語の感想と言えば、中学の時に仲の良かった人が、高校では別のグループに入り、徐々に距離が離れていくところ、主人公が抱く寂しさと、自分もそっちのグループに入ることだってできたのにそれはせず、孤独へと進めていくところがたまらなく切なかったです。
それに近しいところで、にな川のことなんて全然好きではないのに、周りからそのように見られてしまっていて、両極端なその2つの感情が、って感じで描いてあったけど、もしかしたら主人公は少しだけサディステックな気持ちをにな川に抱いていて、その感情が自分の中でうまく解釈できていない可能性もあるよな、と思いました。
あと、にな川の家族の辺り、とても面白く描かれていると思いました。
家族の関係性というか。挨拶なんてしなくていいよ、というにな川と、挨拶もしないで勝手に他人が家に入るの、気持ち悪くない?という正統派な母親。世間で見たら絶対的に母親の方が正しいのですが、にな川家の中でのローカルルールがあって、けどそれはにな川本人しか通用していない辺り。
いやそもそもにな川が友人を家に呼ぶことなんてしないだろうから、そのルール自体、ハツが来た時に勝手に作られたのかもしれません。
けど緊張するよね、家族が明らかにいるであろう部屋を開けずに、障子1枚を隔ててこそこそと友人の部屋に入っていく瞬間。普通は挨拶したほうが良いだろ、という良心の呵責はある一方で、友人が持つローカルルールに従うのもまた普通なことだから、私は、割と家族に申し訳ない、という気分でお邪魔したりしてました、子供の頃。変な緊張感があるよな。