王子に住んでた頃の話

桜の季節には、飛鳥山公園へよく散歩しに行った。
王子には23歳から26歳くらいまで住んでいた。

飛鳥山は桜の名所として有名で、この季節になるとたくさんの人が桜を見に訪れた。
私もその1人だった。
今の奥さんとはその頃から付き合っていたので、2人でぶらぶら散歩していたのがつい最近のように感じる。

あれから20年近く経つのか。
王子を離れた頃を最後に、王子には訪れていない。同様に、飛鳥山にも行っていない。きっと、あの頃とあまり変わらずにたくさんの桜が咲いているのだろう。

王子にはお気に入りの居酒屋やラーメン屋がたくさんあった。20代中盤の欲求を満たすには十分だった。私はもともと田舎育ちだし、あまり派手派手しい生活を好まなかったから、街の雰囲気がちょうど良かった。
都電荒川線という、路面電車もその雰囲気に相まり、落ち着いた雰囲気により一層の色を添えていて、とても居心地が良かった。

こうして、改めてその頃を思い出して何かを書こうとしても、特筆するようなイベントがなかったような気がする。
歩くのが好きだったから、王子を起点に赤羽、上野、町屋、駒込辺りの範囲をたくさん歩いた。その辺のエリア、全部好きだ。
今、もし東京都内に住めと言われたら、迷うことなくその辺りを選ぶだろう。
そう言われると、王子自体に思い出があると言うよりは、王子を起点にして歩いたその辺りに思い出があるのかも知れない。
ゆうやけだんだんで見た野良猫。
赤羽の居酒屋。
駒込の大きな公園と商店街。
それらは、自分を構成する要素の一つひとつで、記憶の引き出しの、割と暖かな思い出が残っているエリアに大切に収納されている。