第二次世界大戦中、少女時代だった女性の話。彼女は疎開中に出会った(と思われる)女性と人生を共にし、いろいろなものに執着しつつも、自分の人生を見つめ直して過ごしていく。
角田光代の小説をKindle Unlimited で見つけてしまったので、取得してから没頭するかの勢いで読んでしまいました。
小説についての感想
過去は変えられないという言葉を何度かこのブログでも書いています。
もうすでに過ぎてしまったことだから。
だけど、よく考えたら、「過去」という事実は変えられないけど、「過去に対する考え方」だったら変えることができるよね。
この主人公は、自分の人生はあまり恵まれていなかったと考えていて、それがベースとなって被害妄想癖を持っているように感じました。
自分に親切にしてくれる人や、娘、息子、夫というとても近い存在の人間に対してまで、信じられないところを持っていました。
それはなぜか。
その辺りを、ずっと考えながら読んでいました。
疎開先ではお世辞にも恵まれた生活とは言えず、自分の理想とはだいぶかけ離れた境遇で、少女時代を過ごしていたこと。そこから、元の家に戻ってからも兄弟間で諍いを起こしてしまうこと。風美子という存在。全て、彼女自身で意見を持つことなく、周りに任せてきたことが裏目に出て、自分で決めなかったことを全部他人のせいにしてきたのかな、という点。
この辺りは他人事とは思えず、読んでいて胸が痛くなる場面が何度もありました。
人を信じること
妄想が悪化すると人を疑うようになることがありますよね。
SNSをやっていれば、他人からの評価が気になる。私は誰からも好かれていないのではないか。
会社でも。家族間でも。
疑いだすとキリがないですね。そして妄想は脳内で強い刺激となり、それを快感と勘違いしてしまうそうなんです。
だから、人間は妄想してしまうのだとか。
それは、意識的にリセットする必要があるんですね。妄想ばっかりしていると、疲れてしまうので。
私は、リセットする方法としては、人を信じることを意識的にやっています。
あとは、妄想していると気づいた時には、違うことを考えるようにして、その妄想から逃げるようにしています。
そうしないと、いつまで経ってもそのことばかり考えてしまうからです。
この主人公も、そういうところがあるように思いました。過去への執着、人への執着。それは妄想なので、いくら考えても答えは出ず、疲れるばかりです。何か違うことをしてみたら良かったのかもな。
いやぁ、それにしても角田光代さん、これは2013年頃の作品だそうですが、相変わらずエグいの描くなぁと思いました。
ちょっと心が痛むので、もう読みたくないです。
言葉を使った表現にさすがだな、と思わせるところが多々あったので星4つです。